イボクセニアウミウシ Phyllodesmium tuberculatum E. Moore & Gosliner, 2009
イボクセニアウミウシとは
体長 1.5 cm 程度の小型のミノウミウシ類で、 体全体が青みがかった灰色を呈し、 背側突起 (ミノ) の上に球状の瘤状突起が散在する。 ホストのソフトコーラル Anthelia 属の周辺に擬態して生息する。特徴
固定標本の体長は 13〜14 mm。 体形は細長く、 背面と外套膜のほとんどを大型の背側突起 (ミノ) が覆い隠す。 体地色は触角・口触手・ミノ・足を含めて全体に青みがかった灰色 (bluish gray)。 ミノは大型で太く、 やや背腹方向に扁平で、 表面に同じ青灰色の球状で隆起する瘤状突起が不均一に散在する (特にミノの縁辺と先端付近に集中)。 ミノの先端は鈍く尖り、 直下には刺胞嚢 (cnidosac) があるが内部の刺胞 (nematocysts) は欠如する。 後方・側方の小型のミノには瘤状突起がなく、 円筒形で先端が尖る。 ミノ内部には消化盲管枝が二次・三次まで分岐し、 大型のミノでは共生褐虫藻 (zooxanthellae) が大量に含まれる (小型のミノには褐虫藻なし)。 触角は平滑だが表面にしわがあり、 円錐形で先端が鈍い。 口触手も平滑で触角とほぼ同長。分布
模式産地はフィリピン・ルソン島南部 (バタンガス州マビニ町の Twin Rocks)。 原記載 (2009) ではこの産地と Sepok (バタンガス州) からのパラタイプを含め、 ルソン島南部のみから知られていた。種小名の由来
ラテン語 tuberculatus (= 瘤の多い、 イボのある) に由来し、 ミノの表面に並ぶ丸い瘤状突起にちなむ。補足
食性はソフトコーラルの Anthelia 属 (クセニア科) に専属し、 サンゴ礁と礫域でホストの近くに見られる。 ホストから取り込んだ褐虫藻を大型のミノに保持する太陽電池型 (kleptoplastic) のミノウミウシで、 Phyllodesmium 属の中でも光合成共生型の系統に属する。 ミノに目立つ瘤状突起を持つ近縁種は Phyllodesmium crypticum、 Phyllodesmium hyalinum (ボブクセニアウミウシ)、 Phyllodesmium lizardensis、 Phyllodesmium lembehensis、 Phyllodesmium koehleri (ケーラーミノウミウシ) の 5 種があるが、 本種は大型ミノの全面に明瞭で高く隆起した球状の瘤状突起を持つ点で区別される。References
- Phyllodesmium sp. 2, Gosliner T.M., Behrens D.W. & Valdés Á. (2008). Indo-Pacific Nudibranchs and Sea Slugs: A field guide to the world's most diverse fauna. Sea Challengers Natural History Books, 426 pp.
- Phyllodesmium tuberculatum sp. nov., Moore E.J. & Gosliner T.M. (2009). Three new species of Phyllodesmium Ehrenberg (Gastropoda: Nudibranchia: Aeolidoidea), and a revised phylogenetic analysis. Zootaxa. 2201: 30-48. https://doi.org/10.11646/zootaxa.2201.1.6
- Phyllodesmium tuberculatum, Terrence Gosliner, Ángel Valdés and David Behrens. (2015). Nudibranch and Sea Slug Identification Indo-Pacific. New World Pubns Inc.
- イボクセニアウミウシ(新称), 中野理枝. (2018). 日本のウミウシ. 文一総合出版.
本書に掲載されています
中野理枝. (2019). 日本のウミウシ. 第二版. 文一総合出版.
文一総合出版
本書には Phyllodesmium tuberculatum の解説・写真が掲載されています。
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