フィロデスミウム・クリプティクム Phyllodesmium crypticum Rudman, 1981
特徴
体は背側突起が密に重なって全体を覆い隠すほど大型で、最大体長 60 mm。口触手は比較的長く先細り、触角は平滑で口触手の約 3 分の 2 の長さ。腹足は幅広く、前角は細長く反り返って触手状、尾部は細く先細り。背側突起は左右各 8 群まで配置され、心嚢前 1 弧、心嚢後の最初の弧は両肢で 2 列・正中線で 1 列、後 3 弧は単列、最後の 3 群は縮小する。背側突起は背腹方向に扁平で断面が四角形をなすのが本種の固有形質で、4 本の縁に結節列が並び扁平面にも散在する。この結節形態が捕食する Xenia 触手にきわめてよく似る。体地色は半透明の白色で内臓が淡橙色〜黄褐色を帯び、口触手の上 3 分の 1 と触角の大部分は白色色素。背中央には消化腺の分岐が褐色筋となって透ける。突起の縁と先端は白色で、ときに青みや褐色を帯びて宿主 Xenia の色に同調する。橙褐色の消化腺が扁平な側面から透ける。
分布
模式産地はオーストラリア・北部 NSW Angourie の大型潮間プール、Xenia 群体近傍。原記載時は北部 NSW (Angourie、Broomes Head、Minnie Waters、Woolgoolga Headland) のみから知られていた。後年の観察でオーストラリア各地、紅海、インドネシア、フィリピン、日本まで分布が拡張されている。種小名の由来
種小名 crypticum はラテン語で「隠された」「擬態した」を意味し、背側突起が捕食対象の Xenia 触手にきわめてよく似る隠蔽擬態に由来する。補足
八放サンゴ Xenia 属を捕食する。Xenia コロニー上か近傍を這い、Phyllodesmium hyalinum のように基部の窪みに潜むことはしない。消化腺細胞内に共生褐虫藻を保持し、Phyllodesmium hyalinum・Phyllodesmium pecten と並んで太陽光発電型の代謝を行う。刺激時には背側突起を素早く自切し、切断された突起は粘着性の分泌物を出して身をくねらせる。日本産個体については Baba 1991 が Phyllodesmium orientale として区別する立場をとっており、本サイトでは pid 1087 をオーストラリア産の Phyllodesmium crypticum として扱う。References
- Phyllodesmium crypticum, Baba, K. 1991. Taxonomical study on some species of the genus Phyllodesmium from Cape Muroto-misaki, Shikoku, and Okinawa Province, southern Japan (Nudibranchia: Facelinidae). Venus 50(2):109-124.
- フィロデスミウム・クリプティクム, 小野篤司. (2004). 沖縄のウミウシ. ラトルズ.
- クセニアウミウシ?, 中野理枝. (2018). 日本のウミウシ. 文一総合出版.
- Phyllodesmium crypticum, Terrence Gosliner, Ángel Valdés and David Behrens. (2018). Nudibranch and Sea Slug Identification Indo-Pacific 2nd Edition. New World Pubns Inc.
本書に掲載されています
中野理枝. (2019). 日本のウミウシ. 第二版. 文一総合出版.
文一総合出版
本書には Phyllodesmium crypticum の解説・写真が掲載されています。
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フィロデスミウム・クリプティクムの写真
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