キマダラウロコウミウシ Cyerce nigricans (Pease, 1866)
特徴
体長 38 mm 程度の中型のサコグロッサ類。体は細長く先端に向けて細まり、平滑で背面は弓状にアーチ形を呈する。側葉は大きく密に重なって扇形に並び、体前部は覆わない。頭部はよく発達し、前方は丸い。触角は長く、口触手は側方へ突出する。口縁は横方向に溝があり、足も横方向に溝をもつ。足の前部は幅が長さより広く、前方は切断状に丸まる。足の後部はより大きく細長く、卵形〜長楕円形を呈する。生時の体地色は深いビロード状の黒色を基調とし、足は淡いスレート色で両者ともに黄色で縁取られる。頭部と体には中央に縦走帯が走り、同色の不規則な斑点が散在する。足近くの体側にも同色の縦線が走る。背側触角には同色の細線、側葉には縁下の帯と少数の盛り上がった同色点で飾られ、口触手は淡青色の細い縁取りをもつ。Pease の原記載は体長約 1 1/2 インチ (約 3.8 cm) の個体に基づく。分布
インド-西太平洋〜中部太平洋。模式産地は太平洋諸島と総称され、Andrew Garrett が中部太平洋で採集した個体に基づき Pease が記載した。後にハワイ諸島、日本列島南部、台湾、フィリピン、インドネシア、グアム、紅海、ニューカレドニアなど広く記録されている。種小名の由来
ラテン語の現在分詞 nigricans「黒みがかってくる」「黒色化する」の意で、本種の深いビロード状の黒色の体地色に由来する命名。Pease の原記載に etymology の明示はないが、原記載の "Color deep velvet black" と整合する。補足
原記載において Pease は新属 Lobifera を立て、本種をその模式種扱いで記載した。Pease は同論文 p.206 で「私は PZS 1860 で Polybranchia 属を立てたが、葉状部を真の鰓と見なした誤認に基づくものであり、属名としては不適切である。よってこれを Lobifera と改名し、新たに 2 種を加えて属の確立を確認する」と記している。後年の分類学的整理により Lobifera 属は Cyerce Bergh, 1871 のシノニムとされ、本種も Cyerce 属に移された (author 表記の括弧書きはこの属移動を示す)。和名「キマダラウロコウミウシ」は黒地に黄色の縁取りと斑紋がある体色および葉状の側葉に由来する。References
- Lobifera nigricans Pease n. sp., Pease W.H. (1866). Remarks on Nudibranchiata inhabiting the Pacific Islands, with descriptions of two new genera. American Journal of Conchology. 2(3): 204-208.
- キマダラウロコウミウシ, 小野篤司. (2004). 沖縄のウミウシ. ラトルズ.
- Cyerce nigricans, Terrence Gosliner, Ángel Valdés and David Behrens. (2015). Nudibranch and Sea Slug Identification Indo-Pacific. New World Pubns Inc.
- キマダラウロコウミウシ, 中野理枝. (2018). 日本のウミウシ. 文一総合出版.
本書に掲載されています
中野理枝. (2019). 日本のウミウシ. 第二版. 文一総合出版.
文一総合出版
本書には Cyerce nigricans の解説・写真が掲載されています。
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