カノコウロコウミウシ Cyerce kikutarobabai Hamatani, 1976

カノコウロコウミウシ Cyerce kikutarobabai

Location
日本>沖縄>沖縄本島(恩納村・読谷村エリア)>ホーシュー
Date
2010/03/24
Size
8mm
Depth
5.0m
Water temperature
23.0℃

特徴

体長は9mm前後、幅1.5mmの小型のウロコウミウシ類。細長い体型でやや扁平。背面の左右に7対の卵形〜円形で両面がわずかに膨らんだ背側突起が並ぶ。触角は長く、葉状で先半分が二叉し、全長にわたって溝が走る。口触手は両縁が巻き上がって円筒状を成す。眼は触角基部の左右で互いに接近し、皮膚を通して見えるほど大きい。腹足は体より幅広く、底面の後端3分の1が前部から明瞭に分かれる。

色彩

体地色は淡い黄白色。眼周辺を除く頭部、触角、口触手は赤紫色を帯び、背は内臓が透けて灰緑色に見える。背側突起は遠心側ほど濃い赤紫色で、黄橙色の縁取りと、両面に散る大きめの黄橙色の斑点が本種固有の標識。心嚢部は多数の乳白色斑で覆われる。口は丸く小さく、両側に赤褐色の小さな弧(口縁の標識)がある。

分布

模式産地は奄美諸島・与論島(27°1'N, 128°24'E、1975年4月1日採集)。防波礁の陸側、ミドリイシ属(Acropora)コロニー上に生育する Caulerpa racemosa 変種上で発見された。

種小名の由来

原記載 (Hamatani, 1976) は次のように明記している ── 「本新種は著者の師である馬場菊太郎博士に献名する。1975年7月11日の馬場博士の70歳の誕生日を記念したものである」。馬場献名種は世界に十数種あるが、その中でも本種は 姓だけでなく名(菊太郎、kikutaro)を含むフルネームで献名された数少ない例で、命名者である濱谷 巖が馬場の弟子であったことと、特別な記念日への献名であることが背景にある。

補足

カタカナ読みは「キェルケ・キクタロババイ」。トルコ産の Cyerce jheringi Swennen, 1892 (= C. cristallina (Trinchese, 1881) のシノニム) と体色が似るが、本種は背側突起が葉状で円形・縁が滑らかであること、黄橙色の縁取りを持つこと、両面に大きめの黄橙色斑があることで区別される。命名者 Hamatani は後年 2002 年に Venus 誌で馬場追悼号 (Venus 61(1-2):97-110) を編んでおり、本種の命名と追悼論文の編纂は 26 年越しの師弟関係を象徴する narrative になっている。
References

本書に掲載されています

中野理枝. (2019). 日本のウミウシ. 第二版. 文一総合出版. 表紙

中野理枝. (2019). 日本のウミウシ. 第二版. 文一総合出版.

文一総合出版

本書には Cyerce kikutarobabai の解説・写真が掲載されています。

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