キエルケ・パヴォニナ Cyerce pavonina Bergh, 1888
特徴
体長は生時で 4〜5 cm の中型の嚢舌類。体地色は明るい褐色で、心嚢部はやや薄色の円形に隆起する。触角は明るい褐色で、表面に白色の細点が散在する。背面の左右には肉厚で葉片状の大型背側突起が整然と並び、長さは 11 mm に達する。突起は卵円形に膨らみ、外面は濃褐色で半透明の小突起と白色の細点をまとい、内面はより薄い褐色を地にクリーム色の斑があり、背側に 2 個の濃褐色斑が並ぶ。突起の縁は暗黄色〜橙色の帯で縁取られ、白色の小突起が密に並んで鋸歯状に見える。腹足の上面は明褐色、足底は灰緑色。分布
原記載時は模式産地モーリシャス島 Ile aux Fouquets 沖の浅い礁から知られていた。その後ハワイ諸島、フィリピン (ルソン島)、タンザニア、インドネシアなど西部・中部太平洋からインド洋に広く分布する個体が報告されている。原記載に用いられた標本は所在不明で、Bergh が参照したコペンハーゲン自然史博物館でも確認されていない。種小名の由来
ラテン語 pavoninus「クジャクの」の女性形 pavonina で、生時の華やかな色彩にちなむ。補足
緑藻ハリメダを食草として利用することが分子系統研究で確認されている。系統的には Cyerce goodheartae と姉妹群を成すが、本種は背側突起が肉厚で多数の突起を備える点、突起内側に 2 個の濃褐色斑が並ぶ点で区別される。タンザニアやフィリピン産の個体には頭部背面に明褐色の横帯が見られるなど、本種名のもとに複数の擬隠蔽種が含まれている可能性が指摘されており、今後の分類学的整理が待たれる。References
- Cyerce pavonina Bgh. n. sp., Bergh R. (1888). Nudibranchien vom Meere der Insel Mauritius. In: Semper C. (ed.), Reisen im Archipel der Philippinen. II. Wissenschaftliche Resultate. Bd. II, Abt. II (Malacologische Untersuchungen Bd. III), Heft XVI: 755-814. Wiesbaden: C.W. Kreidel's Verlag.
- Cyerce pavonina Bergh, 1888, Moreno K., Medrano S., Gosliner T.M., Wilson N.G., Krug P.J. & Valdés Á. (2025). Phylogenetic systematics of the genus Cyerce (Mollusca: Heterobranchia: Sacoglossa: Caliphyllidae) from the Pacific and Indian oceans with descriptions of nine new species. Zoological Journal of the Linnean Society. 204(1): zlaf030. https://doi.org/10.1093/zoolinnean/zlaf030
季節性
撮影地
撮影地を読み込み中...