ネコジタウミウシ Pelagella castanea (Alder & Hancock, 1845)
特徴
体地色は赤褐色から濃褐色で、地中海・大西洋の個体ではときに灰褐色を帯びる。体表には白色斑や白色線が入り、外套膜の縁は明瞭に隆起して周縁突起が並ぶ。
触角は褐色地に白い線が入り、褶葉は7〜9枚。
鰓は8本前後の三回羽状の鰓葉が肛門のまわりに星形に配置される。
体長は最大40mm前後に達し、本科のなかでは比較的大型。
分布
模式産地はイギリス・デヴォンシャー州の沿岸。北東大西洋(イギリス、アイルランド、ノルウェー、オランダ、スウェーデン、スペイン北岸)から地中海(ジブラルタル海峡、フランス、イタリア)にかけて広く分布する。
インド太平洋や日本からも本種とされる記録があるが、これらが Pelagella castanea と同種かどうかは分子的検証が必要とされている。
種小名の由来
ラテン語 castanea(栗色の)に由来する。補足
本種は長らく Goniodoris 属に置かれてきたが、Paz-Sedano et al. 2023 が分子系統解析にもとづき Pelagella Gray, 1850 を復活させ、本種をその属の模式種として再分類した。同論文では北東大西洋・地中海産の個体群が単系統群を形成することが確認されている。
旧学名 Doris pareti Vérany, 1846 や Goniodoris brunnea Macnae, 1958 は本種のシノニムとして扱われる。
和名の初出は内田ら『日本動物図鑑』(1927) の「ねこしたうみうし」、および馬場 1930「日本産裸鰓類の研究 (2)」での「ネコシタウミウシ」で、現在は「ネコジタウミウシ」の表記が定着している。
References
- ねこしたうみうし(新稱), 内田清之助ほか. (1927). 日本動物圖鑑. 北隆館.
- ネコシタウミウシ(平瀬), Baba, K. 1930a. Studies on Japanese nudibranchs (2). A. Polyceridae. B. Okadaia, n.g. (preliminary report). Venus 2(2).
- ネコジタウミウシ, 生物學御研究所編. (1955). 相模湾産後鰓類図譜〈補遺〉. 岩波書店.
- ネコジタウミウシ, 鈴木敬宇. (2000). ウミウシガイドブック〈2〉. TBSブリタニカ.
- 高岡生物研究会. (2002). 日本海のウミウシ. 第2版.
- ネコジタウミウシ, 中野理枝. (2004). 本州のウミウシ. ラトルズ.
- Paz-Sedano S., Smirnoff D., Gosliner T.M. & Pola M. (2023). When a genus must become two: resurrection of Pelagella Gray, 1850 with the description of six new species. Journal of Molluscan Studies. 89(2): eyad008. https://doi.org/10.1093/mollus/eyad008
- Paz-Sedano S., Moles J., Smirnoff D., Gosliner T.M. & Pola M. (2024). A combined phylogenetic strategy illuminates the evolution of Goniodorididae nudibranchs (Mollusca, Gastropoda, Heterobranchia). Molecular Phylogenetics and Evolution. 192: 107990. https://doi.org/10.1016/j.ympev.2023.107990