マメツブハダカカメガイ Hydromyles globulosus (Rang, 1825)
特徴
裸殻翼足類 (殻を持たない翼足類で、俗に「海の天使」と呼ばれるハダカカメガイ類と同じ仲間) のひとつ。体長 8 mm ほどの小さな卵球形で、殻は持たないものの皮層はやや硬く不透明。半透明の皮層を通してオレンジ色の肝臓など内臓器官が透けて見え、体表には白い斑点が散らばる。体の周囲には 2 本の繊毛帯が走り、これをはばたかせて遊泳する。体を伸ばすと長い後足葉と短い側足葉が触角のように前方に突き出る。刺激を受けると頭部・翼足・すべての足葉を、外套膜の前方にある横長の裂け目に引っ込めてしまい、全体がつるりとした楕円体になる。終腸の盲嚢から褐色のインク状の液体を吐く性質も持ち、他の裸殻翼足類を捕食していると考えられている。分布
インド洋と太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布し、南緯 50°から北緯 50°付近までの広い範囲で見られる。日本近海にも普通に出現する。原記載はフランスの軍医で博物学者のサンダー・ラング (Sander Rang) が 1825 年に『Annales des Sciences Naturelles』誌で Psyche globulosa の名で発表したもので、模式産地は明示されていない。種小名の由来
種小名 globulosus (原記載時は属名 Psyche に合わせた feminine の globulosa) はラテン語 globulus (小さな球) から派生した形容詞で、「小さな球状の」という意味。小さくころんとした卵形の体にちなんだ命名で、和名の「マメツブ」(豆粒) も同じ発想から来ている。属名 Hydromyles は、Rang 1825 が原記載で用いた属名 Psyche が鱗翅類などで先取されていたため、Gistel 1848 が提唱した置換名。属名を Hydromyles (masculine) に移したのに合わせて、種小名も globulosa (feminine) から globulosus (masculine) に性一致が修正された経緯がある。補足
マメツブハダカカメガイ科は 1 属 1 種のみを含む小さな科で、近縁の Laginiopsidae 科とともに、通常の裸殻翼足類とは区別して Gymnoptera (Gymnopteroidea) 上科にまとめられることもある。日本国内の古い文献では旧属綴りの「Hydromylus」や feminine 表記の「globulosa」もよく用いられている。References
- Psyche globulosa n.g. n.sp., Rang S. (1825). Description d'un genre nouveau de la classe des Ptéropodes, et de deux espèces nouvelles du genre Clio. Annales des Sciences Naturelles. 5: 283-287.
- マメツブハダカカメガイ Hydromylus globulosa (Rang, 1825), 奥谷喬司 (2017). わが国近海に見られる浮遊性巻貝類—VII 裸殻翼足類. うみうし通信 94: 8-9.