ライオンメリべ Melibe leonina (A. A. Gould, 1852)
特徴
体長は最大 150 mm に達する大型のメリベ類で、生体は半透明で無色から淡黄色、または緑がかった色を呈する。最大の特徴は、糸状の触手が縁に並ぶ大きなフード状の口幕。これを広げて小型甲殻類などのプランクトンを捕らえる。体は滑らかで、背面・背側突起・幅広い足の前縁いずれにも結節や突起をもたない。背側突起と背面には丸い結節があり、背側突起と体には褐虫藻はないと考えられる。背側突起は左右に 4〜6 対で、扁平でパドル状をなす。
口球は幅広く筋肉質だが、顎も歯舌ももたない。食道は短く、唾液腺は小さい。胃の後部にはキチン板を欠く。胃の背側には腺嚢があり、消化腺の管が開口する。消化腺は背側突起内のみで分岐する拡散型で、近縁種に見られるような胃を取り巻く構造はもたない。
神経節のうち口球神経節は左右によく離れ、滑らかで結節をもたない。口幕に並ぶ外側列の触手は内側列よりも細長く伸びる。卵巣胞は 40〜60 個に達し、密集した 2〜4 個ずつの塊を形成する。
分布
北東太平洋固有種。アラスカ州コディアック島からメキシコ・バハカリフォルニア州 Bahía de los Ángeles までの北米太平洋岸 (Behrens, 1991)。種小名の由来
種小名 leonina はラテン語で「ライオンのような」を意味し、口幕の縁に並ぶ触手がライオンのたてがみを連想させることにちなむ。英名は Hooded Nudibranch。補足
原記載は Gould 1852 によるもので、当時は Chioraera leonina として記載された。Chioraera Gould, 1852 は現在 Melibe の同物異名 (junior synonym) とされる。コンブ目の Macrocystis 属の葉上で頻繁に観察され、より低頻度でアマモ Zostera marina 上にも見られる (Ajeska & Nybakken, 1976; Gosliner, 1987)。系統解析では本種は属内で最も基部に位置するが、扁平な背側突起、伸長した口幕外側列の突起、結節をもつ神経節、伸長したペニス、密集した卵巣胞、背側突起内に分岐する拡散型消化腺など、独立に獲得された派生形質を多く備える。
体を左右に C 字型にくねらせて遊泳する能力をもち、危険を感じるとスイカのような甘い香りを発することでも知られる。
References
- Chiorera leonina n. sp., Gould A.A. (1852). Mollusca and Shells. United States Exploring Expedition during the years 1838, 1839, 1840, 1841, 1842, under the command of Charles Wilkes, U.S.N. Vol. 12. Boston: Gould & Lincoln. xv + 510 pp.
- Melibe leonina (Gould, 1852), Gosliner, T. M. (1987). Review of the nudibranch genus Melibe (Opisthobranchia: Dendronotacea) with descriptions of two new species. The Veliger. 29(4): 400-414.
- Melibe leonina (Gould, 1852), Gosliner, T. M.; Smith, V. G. (2003). Systematic review and phylogenetic analysis of the nudibranch genus Melibe (Opisthobranchia: Dendronotacea) with descriptions of three new species. Proceedings of the California Academy of Sciences. 4(54): 302-356.
- ライオンメリべ(新称), スーザン・ミドルトン他. (2015). 海の美しい無脊椎動物. 創元社.
本書に掲載されています
スーザン・ミドルトン他. (2015). 海の美しい無脊椎動物. 創元社.
創元社
本書には Melibe leonina の解説・写真が掲載されています。
Amazon で本書を見る PR (Amazon アソシエイト)