ミドリブドウギヌ Volvatella viridis Hamatani, 1976

Volvatella viridis

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特徴

殻長 5-12 mm 前後の小型の殻つき嚢舌類。生体時は外套組織に含まれる緑色色素のために殻全体が草緑色に見えるのが特徴で、これが種を最も簡明に識別させる。殻から出ている軟体部は乳白色だが、エタノール固定標本では角質様の黄色に変色する。殻はほぼ円形ないし卵形で薄く可撓性に富み、極めて華奢。殻表は淡い麦藁色の膜状エピデルムに覆われた石灰質である。殻口は殻長の半分かやや上を占めるほど大きく、体層は逆に小さく、腹側に向かって急に拡張する形をとる。殻後端は本属に共通する短い注ぎ口を作るが、本種では特に短く殻長の約 1/10 程度しかなく、背側から見たときに正中線から明らかに右にずれて位置する点が特徴的である。頭部の触角様隆起はやや高まる程度の円錐形で、その奥の組織を通して純黒色の眼が透けて見える。頭部前縁の左右は突出して口触手として機能し、その内側にハンコック器が開く。足は小さいが幅広く、前縁が後縁より広い。軟体部の表面、特に足の前縁、口触手、触角様隆起には白色不透明な細点が密に散在する。雄性器の先端には陰茎針を欠く。

分布

本州中部の紀伊半島潮岬、奄美諸島の奄美大島・与論島、琉球諸島の石垣島 (川平) の浅所。模式産地は与論島で、保護礁の陸側に生育する緑藻 Caulerpa racemosa var. clavifera f. macrophysa の葉状体上、低潮線付近で得られている。

種小名の由来

原記載 (Hamatani, 1976) では明示的な etymology 章は設けられず、本種を導入する冒頭で「eight specimens of a greenish form of the genus Volvatella Pease, 1860 were included. They were seemingly conspecific and further detailed examinations revealed that they represented a new species」と述べ、続く新種提唱の項で Volvatella viridis sp. nov. の名と和名「ミドリブドウギヌ」を新設している。種小名 viridis はラテン語で「緑色の」を意味し、生体時に殻全体が草緑色に見える本種の最も顕著な特徴に基づく。

補足

濱谷巌が 1974 年 8 月に潮岬、1974 年 3 月に奄美大島、1975 年 3 月に与論島で行ったイワヅタ群落微小動物相の調査で得た 8 個体に基づき記載された。後に北尾光二氏により石垣島川平で 1975 年 5 月にもう 1 個体が Caulerpa racemosa var. laete-virens から採集され、追加産地として補遺されている。模式標本は与論島産個体 (殻長 11.7 mm、殻幅 7.2 mm) を完模式とし、6 個体が副模式として指定された。寄主は Caulerpa racemosa var. clavifera f. macrophysa および同 var. laete-virens で、本属に典型的なイワヅタ食性をもつ。殻の形態は西アメリカ・サンタエレナおよびコロンビア西岸の Volvatella cumingii (A. Adams, 1855) に類似するが、注ぎ口が短く右に偏ること、殻全体が緑色を呈することで他の Volvatella 各種から識別される。
References
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