アメフラシ Aplysia kurodai (Baba, 1937)
アメフラシとは
日本沿岸の磯で最もよく見られる大型のアメフラシ。広義のウミウシの仲間で、刺激を受けると鮮やかな紫色の液を放つ。春には黄色いひも状の卵塊「海そうめん」を産む。刺激を受けると外套膜の右側にある紫色腺から鮮やかな紫色の液 (紫汁) を放出する。水中で煙のように広がる紫汁が「アメフラシ (雨降らし)」という和名の由来とされ、磯で出会ったときに最も印象に残る特徴である。捕食者を惑わせる目くらまし・忌避物質と考えられており、人が触れても害はない。
潮間帯から水深数メートルの岩礁帯・海藻帯に生息し、紅藻や緑藻を主に食べる。日本では本州沿岸を中心に春から初夏にかけて多数観察される。寿命はおおむね 1 年で、産卵後に死亡する個体が多い。
特徴
日本沿岸で最も普通に見られる大型のアメフラシ類。体長は 350〜400 mm に達し、後方が膨らんで前方は細く、長い首と頭部を持つ。頭部の前端には大きく折り畳まれた 1 対の前触角に守られた縦長のスリット状の口がある。触角は円筒形で、上面に外側を向く縦のスリットを持つ。触角の後方から伸びる側足葉は前後とも分離しており、自由に動かせる。外套膜は楕円形で、貝殻のある内腔と通じる正中の孔 (外套膜孔) を持つ。この孔は若い個体で非常に小さく、成体では小さな乳頭状になることもある。後端には短く巻き込んだ出水管が伸びる。外套膜の右縁には紫色腺が発達する。背面の皮膚は柔らかく滑らか。複数の小孔から乳白色の液が滲み出す。腹足は大型で前方が切り落とされ、後方は鈍い尾になる。背面は褐色か紫黒色で、灰色の小〜不規則な斑が密に散る。個体差が大きく、地色をほとんど隠すほど斑が大きく多い個体もある。腹足の裏は一様に暗色。鰓は黄色、乳白色の液を出す腺は黄白色。
分布
模式産地は台湾、天草・富岡、三崎、館山。原記載時は本州沿岸 (天草・三崎・館山) と台湾から記録されていた。種小名の由来
種小名 kurodai は日本貝類学の先駆者である軟体動物学者・黒田徳米 (1886-1987) への献名。補足
大西洋・地中海産の Tethys punctata とは、側足葉が後方で分離する点と外套膜孔が小さい点で外見的に区別される。References
- Tethys kurodai nov. sp., Baba K. (1937). Opisthobranchia Of Japan (I). Journal of the Faculty of Agriculture, Kyushu University. 5(4): 195-236. https://doi.org/10.5109/22583
- アメフラシ, Baba K. (1949). Opisthobranchia of Sagami Bay collected by His Majesty the Emperor of Japan (相模湾産後鰓類図譜). Iwanami Shoten, Tokyo. 4+2+194+7 pp., pls. 1-50.
- Aplysia kurodai (Baba) Amefurashi, Baba, K. 1957. A revised list of the species of Opisthobranchia from the northern part of Japan, with some additional descriptions. J. Fac. Sci., Hokkaido Univ.,ser. 6, Zool. 13(1-4):8-14.
- アメフラシ, 高岡高等学校生物研究会(編). (1964). 富山湾産後鰓類図譜.
- 高岡生物研究会. (2002). 日本海のウミウシ. 第2版.
季節性
撮影地
撮影地を読み込み中...
アメフラシの写真
タグ: