ウチワミドリガイ Elysia pusilla (Bergh, 1872)
ウチワミドリガイとは
緑藻のサボテングサ類に固着して暮らす小型のウミウシで、平たく広がった体と鮮やかな緑色が藻体そっくりに見える。体表には細かな白点が散らばり、よく探さないと見つからない。特徴
嚢舌類に属する小型のミドリガイの仲間。体長は数 mm から 3 cm 程度までと変異に富む。体地色は鮮やかな草緑色で、背面から側足の外面にかけて微小な白点が多数散布し、とくに側足の縁に沿って白点が並ぶ。触角は短く太い 1 対で、その基部には黒い眼が透けて見える。寄主の緑藻サボテングサ類 (Halimeda) に固着し、藻体の形に合わせて体型を変えることで知られる。平たい節の上では体も平たく、円筒形の節の上ではより円筒状になって藻体に紛れる。分布
模式産地はパラオ諸島のアイブキットで、原記載は当地で得られた 1 個体に基づいていた。その後、インド洋から西部・中部太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布することが知られるようになった。日本では志摩半島の和具などで記録がある。種小名の由来
種小名 pusilla はラテン語で「ごく小さい」「ちっぽけな」を意味し、原記載に用いられた体長わずか数 mm の微小な標本にちなむ。補足
緑藻のサボテングサ類のみを食べる偏食性で、取り込んだ葉緑体を体内に保持して光合成産物を利用する盗葉緑体をおこなう。発生様式には地理的な変異があり、同一種でありながらプランクトン栄養型と卵黄栄養型の幼生をつくり分ける集団が知られる。原記載では新属 Elysiella のタイプ種とされたが、現在この属は Elysia 属のシノニムとして扱われる。南アフリカから記載された Elysia halimedae も本種のシノニムで、和名ウチワミドリガイはこの名に対して与えられたものである。References
- Elysiella pusilla Bergh n.g., n.sp., Bergh L.S.R. (1872). Malacologische Untersuchungen. In: C. Semper (ed.), Reisen im Archipel der Philippinen, Wissenschaftliche Resultate. Theil 1, Heft 4: 177-204, pls 21-24.
- Elysia halimedae n. sp., Macnae W. (1954). On Four Sacoglossan Molluscs new to South Africa. Annals of the Natal Museum 13(1): 51-64.
- Elysia (Elysia) halimedae MACNAE, 1954 Uchiwa-midorigai, Baba K. (1957). THE SPECIES OF THE GENUS ELYSIA FROM JAPAN. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory. 6(1): 69-74. https://doi.org/10.5134/174573
- Elysia pusilla (Bergh, 1872), Vendetti J.E., Trowbridge C.D. & Krug P.J. (2012). Poecilogony and population genetic structure in Elysia pusilla (Heterobranchia: Sacoglossa), and reproductive data for five sacoglossans that express dimorphisms in larval development. Integrative and Comparative Biology. 52(1): 138-150.