スポンジウミウシ Atagema spongiosa (Kelaart, 1858)
特徴
半ゼラチン質で、カイメンウミウシ属の中では最大級になる。体長は 200 mm に達する。体地色は灰褐色や黄褐色、暗褐色が混じった複雑な色調で、背面全体に丸い瘤状の突起が密に並ぶ。背面の正中線上に並ぶ突起は他より大きく、わずかに淡白色を帯びる。突起の表面はさらに細かい絨毛状の突起で覆われ、突起と突起の間は凹んで暗色に沈み込み、全体として海綿の表面のような外観をなす。触角は大きく、先端は切形で薄板が並び、鞘は大きく漏斗状で表面に粒状の質感をもつ。鰓は 5 枚で灰色を呈し、垂れ下がるように開いて、枝が二度分かれる羽状である。分布
インド洋から西太平洋にかけて広く分布する。原記載時はスリランカ(旧セイロン)東岸トリンコマリー湾の内湾深所から記録された。その後、マダガスカル、クリスマス島、オーストラリア、パプアニューギニア、フィリピン、シンガポール、韓国、日本からも知られるようになっている。種小名の由来
種小名 spongiosa はラテン語で「海綿状の」「カイメンに似た」を意味する形容詞である。原記載者の Kelaart は、外套の上面が「ある種のカイメンの表面に酷似する」と表現しており、外套の質感を強く意識した命名である。補足
和名「スポンジウミウシ」は英名 sponge nudibranch にちなむ新称。Phlegmodoris mephitica Bergh, 1878 はシノニム扱い。半ゼラチン質で海綿に紛れる外観のため、海底観察では見落とされやすい。References
- Doris spongiosa, Kelaart E.F. (1858). Description of new and little-known species of Ceylon nudibranchiate molluscs and zoophytes. Journal of the Ceylon Branch of the Royal Asiatic Society. 3(9): 84-139.
- スポンジウミウシ(新称:sponge海牛), Hori S. & Fukuda H. (1996). Opisthobranchia of Yamaguchi Prefecture, western Honshu, Japan — Part 1. The Yuriyagai.
- スポンジウミウシ(新称), 鈴木敬宇. (2000). ウミウシガイドブック〈2〉. TBSブリタニカ.
- ジャノメカイメンウミウシ, 奥谷喬司. (2000). 日本近海産貝類図鑑. 東海大学出版会.
- スポンジウミウシ, 中野理枝. (2004). 本州のウミウシ. ラトルズ.
- スポンジウミウシ, 小野篤司 & 加藤昌一. (2009). ウミウシ. 誠文堂新光社.
- Atagema spongiosa, Terrence Gosliner, Ángel Valdés and David Behrens. (2015). Nudibranch and Sea Slug Identification Indo-Pacific. New World Pubns Inc.
- スポンジウミウシ, 中野理枝. (2018). 日本のウミウシ. 文一総合出版.
本書に掲載されています
中野理枝. (2019). 日本のウミウシ. 第二版. 文一総合出版.
文一総合出版
本書には Atagema spongiosa の解説・写真が掲載されています。
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