ハダカカメガイ Clione elegantissima Dall, 1871

ハダカカメガイ Clione elegantissima

Location
日本>北海道>羅臼>ロウソク岩
Date
2026/04/12
Size
8mm
Depth
1.0m
Water temperature
-2.0℃

ハダカカメガイとは

北太平洋・オホーツク海の寒流域に分布する裸殻翼足類で、いわゆる「クリオネ」の通称で親しまれる小型の浮遊性ウミウシ類。半透明の体に淡い赤橙色の頭部と内臓塊が透けて見え、左右一対の翼足を羽ばたかせて遊泳する。

特徴

体は半透明で頭部や内臓塊が淡い赤橙色を帯びる、円筒形の浮遊性小型巻貝。幼生期の段階で殻を脱ぎ捨て、成体は完全に殻を持たない。胴体側面に左右一対の翼足が発達し、これを羽ばたかせて遊泳する。摂食時には頭部から 6 本の口円錐 (3 対) を瞬時に展開して獲物の殻を捕らえ、続いて口内のキチン質の鉤を伸ばして軟体を引き出す。北太平洋・オホーツク海産個体は最大で全長 30 mm 前後で、北大西洋〜北極海産の Clione limacina (最大 70〜85 mm) よりも明らかに小型。一般には「クリオネ」の通称で親しまれている。

分布

原記載 (Dall, 1871) は東カムチャツカ (ロシア極東) の標本にもとづく。北太平洋表層〜オホーツク海の寒流域に分布し、日本ではオホーツク海南部に多産する。流氷下や氷縁域でも観察され、南限の記録は茨城県大洗 (稲葉・奥谷, 1999)。長年にわたって Clione limacina として同定されてきたが、Yamazaki & Kuwahara (2017) が分子・形態・行動の総合的根拠から北太平洋個体群を別種として整理し、Dall (1871) の Clione elegantissima を valid 名として復活させた。さらに同地域には別種 Clione okhotensis Yamazaki & Kuwahara, 2017 (北海道紋別、浅海、体長 8 mm) および Clione japonica Yamazaki, Shimada & Zhang, 2025 (富山湾深層、隠蔽種、体長 5 mm) が同所的に分布する。

種小名の由来

種小名 elegantissima はラテン語 elegans (優美な、上品な) の最上級女性形で「最も優美な」を意味する。属名 Clione はギリシャ神話の海のニンフ「クリオ (Cleio)」に由来する。

補足

裸殻翼足類に属し、生涯を外洋で過ごす完全浮遊性のウミウシ類。雌雄同体で、産卵期は春から夏。寿命は少なくとも 2 年に及ぶ。成体は同所的に分布する有殻翼足類のミジンウキマイマイ Limacina helicina をほぼ専食し、捕食所要時間は 1 個体あたり約 30 分とされる。Limacina 類は海洋酸性化による炭酸カルシウム殻の溶解に脆弱で、その捕食者である本種も極域生態系の指標種として注目されている。和名「ハダカカメガイ」は「裸の亀貝」の意で、殻を持つ翼足類 (亀貝類) との対比による。
References
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