フェリミダ・ビンザ Felimida binza (Ev. Marcus & Er. Marcus, 1963)
特徴
体長 1〜2 cm の小型イロウミウシで、体地色は白〜淡黄色。背面の色彩・斑紋は地理的・個体的に著しく多型を示す。カリブ海産の個体は楕円形または短い背線状の暗赤紫色の斑を背面に散らし、黄色の縁取りをもつ型 (旧 "binza" パターン、旧 "clenchi" パターン) が見られる。一方、東大西洋 (アゾレス諸島・マデイラ諸島・カナリー諸島) および地中海産の個体は、暗紫色のマントに黄色の縦線または斑列を生じ、外縁が紫色に縁どられる型 (旧 "britoi" パターン) を示す。これらは一見明確に異なるが、同一種の地理的色彩変異であることが分子系統解析で示されている。
分布
模式産地はキュラソー (オランダ領カリブ海)。カリブ海 (キュラソー、コスタリカ、メキシコ、パナマ、ヴァージン諸島、キューバ)、ブラジル北東部、サンタヘレナ島、東大西洋 (アゾレス諸島・マデイラ諸島・カナリー諸島)、地中海 (メノルカ島、ギリシャ) から記録されている。種小名の由来
種小名 binza の由来は Marcus & Marcus 1963 の原記載には明示されていない。補足
原記載では Chromodoris 属に置かれたが、現行の分類では Felimida 属に組み替えられている (学名の括弧書き author 表記はこの属移動を示す)。Padula et al. 2016 は Felimida clenchi 種群について分子系統 (COI・16S・H3) と種境界解析 (ABGD・GMYC・PTP) を統合した検討を行い、従来 4 種 (F. clenchi / F. neona / F. binza / F. britoi) として分けられていた群が実際には 3 系統 (再定義された F. clenchi / 再定義された F. binza / ブラジル産未記載種) であることを示した。これに伴い Felimida britoi (Ortea & Pérez, 1983) は本種のシノニムとなり、東大西洋・地中海集団も本種に含められた。
References
- Felimida binza, Johnson R.F. & Gosliner T.M. (2012). Traditional taxonomic groupings mask evolutionary history: a molecular phylogeny and new classification of the chromodorid nudibranchs. PLoS ONE 7(4): e33479.
- Felimida binza (= Felimida britoi syn. nov.), Padula V., Bahia J., Stöger I., Camacho-García Y., Malaquias M.A.E., Cervera J.L. & Schrödl M. (2016). A test of color-based taxonomy in nudibranchs: Molecular phylogeny and species delimitation of the Felimida clenchi (Mollusca: Chromodorididae) species complex. Molecular Phylogenetics and Evolution. 103: 215-229. https://doi.org/10.1016/j.ympev.2016.07.019