コチョウカメガイ Desmopterus papilio Chun, 1889
特徴
有殻翼足類でありながら成体では殻を完全に欠く。体は丸みを帯びた円筒形で、体長0.5〜2 mm。翼足(パラポディア)が癒合して直径2〜4 mmの円盤状の遊泳板を形成し、5つの葉片からなる。遊泳板は透明で、わずかな筋繊維が見える。遊泳板の左右側葉の間に赤みを帯びた扁平な長い翼触手が1対ある。体の後端はわずかに巻いている。体表には小さな赤色の腺細胞が散在する。分布
インド洋、紅海、太平洋、大西洋の暖水域に広く分布する。湧昇域を避ける傾向がある。日本近海では黒潮水の影響のある暖水域に普通に見られる。模式産地は東大西洋カナリア諸島沖。種小名の由来
属名 Desmopterus はギリシャ語の desmos(帯)と pteron(翼)に由来し、帯状の翼足を意味する。種小名 papilio はラテン語で「蝶」の意味で、蝶の翅のような遊泳板の形状に基づく。和名コチョウカメガイ(胡蝶亀貝)も同じく蝶に由来する。補足
コチョウカメガイ科(Desmopteridae)に属する。雌雄同体で、強い雄性先熟を示す。植物食性で、粘液を用いて微小プランクトンを捕食する。表層遊泳性(epipelagic)。本種は擬有殻翼足亜目(Pseudothecosomata)に属し、成体で殻を完全に欠く。1855 年に Cymbulia cirroptera として記載された幼体が本種と同種である可能性が指摘されており、もし同種と確認された場合はそちらの名前が優先される。同属の D. pacificus Essenberg, 1919 は太平洋産で、本種より翼触手が短い点で区別される。References
- コチョウカメガイ Desmopterus papilio Chun, 1889, 奥谷喬司. (2016). わが国近海に見られる浮遊性巻貝類―VI. 有殻翼足類・ミジンウキマイマイ科及び擬有殻翼足類. うみうし通信, 93, 4–5.