チビクロモウミウシ Panderevela hyllebergi K. R. Jensen, 2021
特徴
体長わずか2mm前後の微小なウミウシ。生体時の体地色は強い黒色で、背側突起、触角、頭部側面が黒く覆われる。頭部前縁の溝、背側突起の先端、足底、眼の周囲、頭部側面の一部は無色で白く見える。背側突起は紡錘形で、先端近くに細いオレンジ色の帯があり、最先端は透明で片側に黒色の小斑が入る。
触角は円筒形で基部が扁平、先端は白色を呈する個体が多い。頭部前面には黒色の縦帯が走り、左右に隆起した稜が中央の溝を挟んで並ぶ。
心嚢部は短い卵形で、後方に白色の小斑または条が入ることが多い。
体長は液浸標本で1〜1.9mm、生時で約2mmと、嚢舌目のなかでも特に小型な部類に入る。
分布
タイ・プーケット島南部のラワイビーチ。模式産地のみから知られ、1986年11月および1990年11月に採集されたわずか数個体に基づく。同所からその後の調査では再発見されておらず、希少と考えられる。グアムから記録されている Costasiella sp. 4 (Krug et al., 2015) は本種に近縁な未記載種の可能性が指摘されているが、背側突起の色彩が異なることから別種として扱われている。
種小名の由来
タイの海洋生物学に深く関わったデンマークの海洋生物学者、故 Jørgen Hylleberg 教授への献名。Jensen の長年の友人・同僚であり、彼女をタイの海洋生物学、プーケット海洋生物研究センター、そして Tropical Marine Mollusc Programme へと導いた人物。補足
緑藻 Avrainvillea 属の葉状体に付着して生活し、しばしば砂粒を巻き込んだ柄部を割ると見つかる。属 Panderevela は Moro & Ortea 2015 によって Costasiella から分離された属で、複眼が触角の「あいだ」ではなく「うしろ」に位置すること、足前縁に触手や突出した角がないこと、触角の側方延長が頭部前面まで続いて中央の溝を挟む稜を形成することで区別される。本種はインド太平洋から最初に記載された Panderevela 種である。
全標本がホルマリン固定で保存されたため、DNA 解析は行われていない。
References
- チビクロモウミウシ(仮称) Ercolania sp. 1, 小野篤司. (1999). ウミウシガイドブック. TBSブリタニカ.
- チビクロモウミウシ, 小野篤司. (2004). 沖縄のウミウシ. ラトルズ.
- チビクロモウミウシ, 中野理枝. (2018). 日本のウミウシ. 文一総合出版.
- Panderevela hyllebergi sp. nov., Jensen, K.R. (2021). A new species of Panderevela (Gastropoda: Heterobranchia: Sacoglossa) from Phuket Island, Thailand. Phuket Marine Biological Research Center Bulletin. 78: 49-58., available online at https://km.dmcr.go.th/ckeditor/upload/files/Research%20Bulletin/FullpaperPMBC/09A_new_species_of_panderevela_.pdf
本書に掲載されています
中野理枝. (2019). 日本のウミウシ. 第二版. 文一総合出版.
文一総合出版
本書には Panderevela hyllebergi の解説・写真が掲載されています。
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