サガミウミウシ Showajidaia sagamiensis (Baba, 1937)
特徴
体長 40〜50mm に達するドーリス型ウミウシ。輪郭は楕円形で前後ともほぼ等しく丸い。背面は大小さまざまな突起がまばらに散在する点で目立つ特徴をもち、小さな突起は粒状、大きな突起は鈍く尖った円錐形で立ち上がる。外套膜はやや柔らかく体の周囲にゆったりとせり出すが、移動中は腹足の尾端がわずかに後方に覗くことがある。皮膚全体に細かい骨片を備える。触角は太短い円柱状の柄に襞をもつクラブが載り、縁の整った鞘内に引き込むことができる。二次鰓は 5 枚で三回羽状、肛門乳頭を取り囲んで広がる。鰓鞘の縁は背面の突起と同様の小突起で縁取られる。頭部は小さく、口は短い縦長のスリット状で、口触手は短い三角形。腹足は前縁が急に丸まり二裂し、上唇中央に切れ込みが入る。後端は鈍く尖る。体地色は水色を帯びた白色で、背面の突起は橙黄色を呈する。
分布
模式産地は相模湾甘鯛場 (水深 50 尋) および相模湾長井亀城礁西沖 (水深 40 尋)。原記載以降、日本近海以外からの確実な記録は知られていない。種小名の由来
種小名 sagamiensis はラテン語で「相模 (湾) 産の」を意味する地名形容詞。模式産地である相模湾にちなむ。補足
本種は原記載 (Baba, 1937) では Cadlina 属の新種として、同じ相模湾から得られた Cadlina japonica とともに記載された。Korshunova ほか 2020 によるドーリス類の系統再編で、本種は新設された Showajidaia 属に移され、Cadlina sagamiensis は旧名となった。属名 Showajidaia は「昭和時代」にちなむ造語で、海洋生物学者でもあった昭和天皇の業績への敬意を込めて与えられたもの。馬場は本種を、背面のごく粗い突起の配置、唇板の鉤が先端で二岐すること、第 1 側歯の内縁に大きな小歯と外縁に小歯列をもつことなどによって、同所で記載した Cadlina japonica (鉤は非分岐、半歯列の歯数 50 を超す) と区別した。外見上は、背面が密に突起で覆われる Cadlina japonica に対し、本種は突起がまばらで、鈍円錐形の大きな突起が水色がかった白い体地色のなかに橙黄色のアクセントとして立つ点で容易に見分けられる。
References
- サガミウミウシ(新稱 ), Baba, K. 1937d. Two new species of the nudibranchiate genus Cadlina from Sagami Bay, Japan. Venus 7(2):75-80.
- サガミウミウシ, Baba K. (1949). Opisthobranchia of Sagami Bay collected by His Majesty the Emperor of Japan (相模湾産後鰓類図譜). Iwanami Shoten, Tokyo. 4+2+194+7 pp., pls. 1-50.
- Korshunova T., Fletcher K., Picton B., Lundin K., Kashio S., Sanamyan N., Sanamyan K., Padula V., Schrödl M. & Martynov A. (2020). The Emperor’s Cadlina, hidden diversity and gill cavity evolution: new insights for the taxonomy and phylogeny of dorid nudibranchs (Mollusca: Gastropoda). Zoological Journal of the Linnean Society. DOI: 10.1093/zoolinnean/zlz126/5741605.