イクオハダカカメガイ Paedoclione doliiformis Danforth, 1907
イクオハダカカメガイとは
太平洋の温帯〜冷水域に分布する極小のハダカカメガイ科の浮遊種。北海道近海で海中写真家 中村征夫氏が最初に撮影したことから「イクオネ (中村のニックネーム"イクオ" + クリオネ)」と呼ばれ、それが転じて和名「イクオハダカカメガイ」となった。特徴
体長は約 5 mm。頭部触角は短小、翼足は丸みのある方形。口円錐は非対称で 2 対をもつ。頭部の後ろ、体の中央付近、後端近くに明瞭な繊毛帯を備える。成体でも殻を持たず、体はゼラチン質で大部分が透明、前部にオレンジ色の内臓塊が透けて見える。成体になっても幼生期の外部形態を保持する幼形成熟 (ネオテニー) が知られる。分布
原記載 (Danforth, 1907) はアメリカ合衆国メイン州カスコ湾で得られた個体に基づく。当初は記載から 61 年間にわたり再採集されず、1968 年にカナダ・ノバスコシア州やメイン湾で再発見された。奥谷 (2017)『わが国近海に見られる浮遊性巻貝類—VII 裸殻翼足類』では、太平洋の温帯〜冷水域に分布する種として記載されており、日本では北海道近海から記録されている。種小名の由来
種小名 doliiformis はラテン語 dolium(樽)と -formis(〜の形をした)の合成で、樽のような体形にちなむ。属名 Paedoclione はギリシャ語 paedo-(幼い)と近縁属名 Clione の合成で、「幼いクリオネ」を意味する。和名の由来
奥谷 (2017) によれば、和名は最初に北海道近海で本種を撮影した海中写真家 中村征夫氏が、自身の名前「征夫 (いくお)」とクリオネを合わせて「イクオネ」と呼んだことに由来し、それが「イクオハダカカメガイ」として定着した。補足
Paedoclione 属の唯一の種にあたる。奥谷 (2000)『日本近海産貝類図鑑』では和名「イクオハダカカメガイ (改称)」を別種 Pneumoderma atlanticum pacificum に当てていたが、奥谷自身が 2017 年の改訂版 (うみうし通信 No. 94) で本種に和名を当て直しており、現在は本種への適用が確定している。References
- Paedoclione doliiformis n. g., n. sp., Danforth C.H. (1907). A new pteropod from New England. Proceedings of the Boston Society of Natural History. 34: 1-19.
- イクオハダカカメガイ (改称) Pneumoderma atlanticum pacificum (misappl.), 奥谷喬司. (2000). 日本近海産貝類図鑑. 東海大学出版会.
- イクオハダカカメガイ Paedoclione dolliformis (Danforth, 1907), 奥谷喬司 (2017). わが国近海に見られる浮遊性巻貝類—VII 裸殻翼足類. うみうし通信 94: 8-9.
- イクオハダカカメガイ Paedoclione doliiformis (Danforth, 1907), 中野理枝. (2018). 日本のウミウシ. 文一総合出版.
本書に掲載されています
中野理枝. (2019). 日本のウミウシ. 第二版. 文一総合出版.
文一総合出版
本書には Paedoclione doliiformis の解説・写真が掲載されています。
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