ウキヅツガイ Cuvierina columnella (Rang, 1827)
特徴
翼足類 (いわゆる「海の蝶」の仲間) の一種で、透明な瓶 (ボトル) のような形の小さな殻を持つ浮遊性の巻貝。殻の長さは 10 mm ほど、最大幅は殻頂に近い部分にあり、殻口はややひしゃげた亜三角形になる。殻全体としては細長い円筒状で、葉巻 (cigar) にたとえられることもある。円錐形の原殻 (胎殻) はふつう成長とともに失われ、殻の底部にわずかに襟状に残っていることが多い。殻口の両側からは左右の翼足が張り出し、これを羽ばたかせて水中を漂う。ずんぐりと中程が膨らんだ型は「ツボウキヅツ forma urceolaris」と呼ばれてきたが、近年はこれを別種 Cuvierina urceolaris として扱う見解が主流になってきている。分布
世界の熱帯・温帯海域に広く分布する外洋性の浮遊種。日本近海では黒潮水域で見られ、海岸に打ち上げられた殻が見つかることもある。模式産地は北西大西洋 (北緯 37°05'、西経 54°34')。種小名の由来
種小名 columnella はラテン語 columna (柱) の指小形で、「小さな柱」を意味し、細長い円柱状の殻の形に由来する。属名 Cuvierina は、Rang 1827 が原記載で用いた属名 Cuvieria がすでに別の動物群で使われていたため、Boas 1886 が与えた置換名。フランスの動物学者ジョルジュ・キュヴィエ男爵 (Georges Cuvier, 1769-1832) への献名で、-ina は指小形の語尾。補足
以前は Cuvierina 属にはほぼ本種 1 種しか認められていなかったが、Burridge, Janssen & Peijnenburg 2016 による属の包括的な見直しで 6 種に分けられた。北東大西洋・地中海の個体は Cuvierina atlantica に、カーボヴェルデ海域のものは Cuvierina cancapae に、太平洋からは新種 Cuvierina tsudai が記載されている。このため、Okutani 2016 以前に「Cuvierina columnella」として記録されてきた日本近海の個体群は、今後の精査で Cuvierina tsudai 等に整理し直される可能性がある。References
- Cuvieria columnella n.g. n.sp., Rang S. (1827). Description de deux genres nouveaux (Cuvieria et Euribia) appartenant à la classe des Ptéropodes. Annales des Sciences Naturelles. 12: 320-329, pl. 17 [dated 1826].
- ウキヅツガイ Cuvierina columnella (Rang, 1827), 奥谷喬司 (2016). わが国近海に見られる浮遊性巻貝類―IV. 有殻翼足類 (1):カメガイ科のウキビシガイ亜科・ウキヅツガイ亜科. うみうし通信 91: 8-9.
- Cuvierina columnella (Rang, 1827), Burridge A.K., Janssen A.W. & Peijnenburg K.T.C.A. (2016). Revision of the genus Cuvierina Boas, 1886 based on integrative taxonomic data, including the description of a new species from the Pacific Ocean (Gastropoda, Thecosomata). ZooKeys. 619: 1-72.