ウキビシガイ Clio pyramidata Linnaeus, 1767
特徴
翼足類 (いわゆる「海の蝶」の仲間) の代表的な種のひとつで、ガラスのように透明な菱形の殻を持つ。殻長はおよそ 20 mm。腹側はほぼ平らで、背側は中央を縦に走る稜で盛り上がり、殻口は亜三角形になる。殻は後方に向かって細くなり、先端の水滴型の原殻 (胎殻) との境界にはゆるいくびれが残る。殻口から左右一対の翼足を広げ、はばたきながら水中を漂う。殻幅が狭く原殻が丸い型を forma pyramidata、殻が横に張り出して原殻が細長くなる型を forma lanceolata と呼ぶなど、複数の型が知られる (Spoel 1967, 1976 は 8 型を認めている)。分布
全世界の熱帯・温帯海域から南北の極前線 (極冷水帯との境界) 付近までと、きわめて広い範囲に分布する。日本近海の沿岸でもごく普通に見られる。原記載はリンネの『Systema Naturae』第 12 版 (1767 年) によるもので、模式産地は特に明記されていない。種小名の由来
種小名 pyramidata はラテン語 pyramis (ピラミッド) から派生した形容詞で、「ピラミッド型の」という意味。背面から見ると菱形・三角形に尖る殻の形に由来する。属名 Clio はギリシャ神話の歴史を司る女神クレイオー (Κλειώ) に由来するとされ、リンネが好んで用いた神話由来の属名のひとつ。補足
本種には時折、貝殻に対して軟体部 (中身) が異常に小さくなった奇妙な個体が見つかる。これは Spoel 1962/1973/1979 によって「横分裂 (strobilation) の結果生じる異常期 (aberrant stage)」と解釈されており、軟体動物ではこの本種でしか知られていない珍しい繁殖現象とされる。分裂した前方部分は殻を失って泳ぎ出すとされているが、野外でその姿を見かけた報告は無く、現象の実体はいまも完全には解明されていない (Lalli & Gilmer 1989)。References
- Clio pyramidata n.sp., Linnaeus C. (1767). Systema naturae per regna tria naturae: secundum classes, ordines, genera, species, cum characteribus, differentiis, synonymis, locis. Editio duodecima reformata. Vol. 1 (Regnum Animale), parts 1 & 2. Laurentius Salvius, Holmiae (Stockholm). 1327 pp.
- ウキビシガイ Clio pyramidata Linnaeus, 1767, 奥谷喬司 (2016). わが国近海に見られる浮遊性巻貝類―IV. 有殻翼足類 (1):カメガイ科のウキビシガイ亜科・ウキヅツガイ亜科. うみうし通信 91: 8-9.
- ウキビシガイ, 中野理枝. (2019). 日本のウミウシ. 第二版. 文一総合出版.
本書に掲載されています
中野理枝. (2019). 日本のウミウシ. 第二版. 文一総合出版.
文一総合出版
本書には Clio pyramidata の解説・写真が掲載されています。
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